2012年4月17日火曜日

プロフェッショナル 仕事の流儀7

プロフェッショナル 仕事の流儀7  茂木健一郎&「NHKプロフェッショナル」制作班
2006年11月刊 171p


要約


カーデザイナー / 奥山清行

国際的な舞台で活躍するトップ・デザイナー。2002年に「エンツォフェラーリ」を発表する。
現在はイタリア・トリノの名門デザインスタジオで、デザイン部門の最高責任者(デザイン・ディレクター)を務める。

元々強靭な気質ではないが、仕事に挑む際は「猛獣使い」になるための仮面を被る。
人の根本は変わらなくとも、人との接し方、自分の表現の仕方はどんどん変えてゆけるものだ。
英語の時は英語の人格、イタリア語の時はイタリア語の人格がある。言葉が違うから考え方も変わるわけで、思考回路が切り替わる。

世界から来たデザイナー達は猛獣。その猛獣を従わせるには自分の場合、実力を示すしかない。だから一番スケッチをするし、腕は常に磨き続ける。

道具にこだわり、手が生み出してくれる偶発性を大事にする。
エンツォフェラーリを生みだすのにかかったスケッチは15分。今までの膨大な努力がそれを生みだした。

美しくないものは罪」ものを作るということは、代わりに他の何かが破壊されるということ。新しいものは、その破壊を超える価値がなければならない。
必要なものだけで生きていたら動物と同じ。必要でないものが沢山あって、またそれを作り出していくのが人間。だからこそ真剣に作ったものでなければデザインは意味がない。機能の裏付けがあって、表面的でなく説得力のある美しさを追求したい。
見た目の奥に深いものが潜んでいるという雰囲気は絶対に通じる。プロは、一般人に理解できなくとも、その裏の仕組みを全て分かっていなければならない。

1日に20個、恥をかけ
自ら恥をかこうと思うぐらいでないと、新しい事に飛び込んでいけない。心の奥にプライドを持ち続ける事は結構だが、もっと表面的な部分で恥をかくことも大切。

日本人が海外で活躍するために必要なのは、まずコミュニケーション。現実には4分の1程度しか伝わっていない事が多い、だとしたら自分で考える4倍の量を話すこと。
「魚は、自分の周りに水がある事に気づいていないのではないか」外から来た日本人だからこそイタリアの文化や本質に気付けるものがある。



棋士 / 羽生善治

大局の前に思い浮かべる言葉「玲瓏(れいろ
透き通り、曇りのないさま。雑念にとらわれず、澄み切った心で盤面に向かう。

対局中に考えていることは大雑把にいって「読み」と「大局観
読みが具体的な手を読んでいくことなら、大局観は全体の方向性を決めること。数多くの手の中から、まず直感で多くの手を捨てる。
直感とは、今まで自分が積み重ねてきたものの中から迷いなく浮かび上がるもの。

若い時の勢いにまかせた勝負は、発想が乏しくとも、一貫性があって戦略的には優れている。
歳を重ねると色々な選択肢が増えて、全体に一貫性がなくなってしまいがち。そういった事に対する意識を合わせて上げていかないと、良い結果を残し続けるのは難しい。

手堅く無難にいっても、そこからは何も生まれてこない。納得のできる良い作戦で、のちの自分に繋がるなら、1つ2つの負けは苦にならない。
将棋の世界は進化し続けているから、自分のスタイルをその流れに合わせていくというのが正しい姿だと思う。

集中力は日によって違う。大切なのは、集中力が今一つの時でも無理をしないこと。集中が切れない程度に考えていく。
切れる時は切れた方がいい。そこで一旦発散できる。負けは全部自分に返るので、そういうこともある方がいい。
一方で、外からのプレッシャーが集中力を引き出すのに大事な役割を果たすということも事実。

何かを成し遂げたという経験があれば、結果が出ていない状態でも踏ん切りが利く
変化はしていても、自分自身の核は揺らがない。目指すところは揺るぎない人。



料理人 / 徳岡邦夫

102%にこだわる
人間の能力は100%あるのに80%しか使わない。使わないと、能力が縮んでしまう。だから101%や102%というギリギリの淵に立ち、瀕死の時に能力が膨らむ。
150%や200%ではパンクしてしまうけど、1~2%の無理だったら、あえてしてみる

「工夫して 心くだくる想いには 花鳥風月みな料理なり」
「くだくる」は、大波が岸壁にぶつかって木っ端微塵になること。たとえ相手に伝わらなかったとしても、それほどの想いで工夫をするのが料理
海の波は砕け散っているが、何年も経てば岸の方が削れたりする。

「もてなし」は相手のすべてを想像すること。



感想

ずっと羽生善治のプロフェッショナルを見たかったのだが、偶然図書館で本になっているのを見て借りてしまった。
文面でもその真意は色褪せない。とはいえ、やはり映像で見たいと思う。顔つきや表情、声や身振りも大切な要素だ。それを感じ取りたかった。
羽生の章のみを読むつもりだったが、せっかくなので他の二人も目を通し、また読み返したい所を要約した。
カーデザイナー・奥山清行の章は流石の気迫だった。決して料理人・徳岡邦夫の章が薄いわけではないが、自分に響くものの違いだろう。
全体として一番印象に残ったのは奥山清行の人柄だった。ジャパンバッシングの激しい80年代後半にアメリカへ渡り、学校や就職先では常に批判に晒されるという状況の中を生き抜き、結果を残してきた。本当に強い人間だと思う。生まれ持った耐性の強さもあるかもしれないが、その不屈の精神が羨ましい。

0 件のコメント:

コメントを投稿