2012年5月8日火曜日

わからないからおもしろい 生命力に溢れた美術家・大竹伸朗

抜粋

「これは何をつくろうとしているのか」と問うと、「俺にもわかんないんだよ」。あらかじめ頭で考えてもそのとおりにはならない、答えが見えたとたんに描きたいという衝動が消え失せることがあると、大竹は言う。何事も事前に計画を立てたり、知識で武装したりしないと不安でいっぱいになる現代人に、「わからないから、おもしろいんだ」という言葉は、示唆するものが大きい。


「でも、こうやればおもしろくなるとわかって繰り返すと、つまらなくなる。人間って、データを取り出して分析して、先に考えるようになるでしょ。こういう材料を使って、こういう段取りでやれば、こうなるって。だから2枚目は、1枚目を超えられないよ。アートだけじゃなくて、何についても言えることでさ」

緻密なプラン、論理的なコンセプト、成功に導くセオリー。それらに基づけば安定感はあるけれど、かえって成果を矮小化させることになりかねない。人間にはむしろ、頭で想定したことを超える何かを生みだすパワーが、その正体はわからないけれど、備わっているのだ。


「今の日本なんか、生きてておもしろくないでしょう。規制だらけでグレーゾーンがないし、正しい人しか生きちゃいけないみたいなさ。くそ食らえだよ。男が草食化すりゃ、言いなりになるから女には都合がいいんだろうけど、それだと動物としてつまんねぇんだよ」


「俺は、生きてる間に自分のやりたいことの答えが出るなんて思ってない。『一貫性がない』って批判も聞こえるけど、どうでもいいわけよ。そいつらは、俺の一生に関して何の保証もしてくれないしさ。最終的には自分の気持ちに正直になるってことに行き着くよね。だから、コンセプトよりも『思い』だよ。思いを素直に出すのが、人間の喜びじゃないかな」

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